不眠症1

寝不足から睡眠障害になるという事は、頭では理解出来ても、「なかなか寝付けない!」という悩みを抱えている方も現代ではかなり多いでしょう。そこで、今回は、なぜ寝ようとしても寝られないのか、寝たいのに眠れなくなる原因について詳しく解説いたします。現代人の最も多い、睡眠不足を防ぐ方法とは、どのようなものがあるのでしょうか?





快適な睡眠は意識の問題ではありません

2不眠症
なかなか夜に寝られない人には、よく言われる”就寝1時間前の行動”について、論じられる事が多いですが、視覚や聴覚の刺激以外に、実は体温も睡眠には深い関係があります。

人間の体は、起きて活動する時には、「血圧が上昇する」ということ、続いて脳に血液中の糖分やホルモンなどの伝達物質が行き渡ることによって、自然と体温が上がって起きられるようになっています。一方、夜になると、周囲が暗くなり、また周囲の音も静かになることから、脳の活発な活動は収まっていき、それにつれて、血圧は自然と下がるようになっています。

例えば赤ちゃんは、眠る前に手足が温かくなることがあり、子育てをしたことのなる方なら、恐らく経験があるはずです。つまり、睡眠不足になりやすい方は、こうした体温調整が上手く行かない場合に起こりえる可能性が非常に高いのです。



体の2つの機能を使って脳を騙そう

1日の中で人の体温は、大きく分けて2つあり、難しい言葉で「熱産生・放熱機構」というのがあります。これは、耳の奥のほうにある脳の”前視床下部”というところで調節しています。これがまず環境適応能力に関係して、体温の上げ下げを担っています。

就寝や起床の時には、”体内時計”と呼ばれる昼夜の区別が、生まれた頃からしばらくして、食事や活動といった生活リズムによって出来上がります。丁度、おでこの奥にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という脳の中の機能で、これが体温調節と上手く噛み合っていると、睡眠のリズムが正しくセットされるのです。

この「視交叉上核(しこうさじょうかく)」の機能は、外気温の変化や季節などの環境の変化で、上手く適応できるように一定のリズムを作る機能をもっています。

つまり、人の体は眠るときには放熱し、起きる時は血圧を上げて体温を上げるように、上記の2つの機能を利用しているのです。つまり、なかなか寝付けない人、寝不足になりがちな人は、環境適応力と体温調節のどちらかが、実際の生活とはズレてしまい、結果、体温調整が寝る前には低すぎ、起きる時もなかなか体温が上がらないといった、身体的な不具合が原因である場合があるのです。

体温が下がると自然に眠くなる?

世の中には、どんな仕事や生活スタイルでの変化にも、決まった時間に眠くなる人がいます。健康的な人なら、夜は日差しもないので、通常は気温が下がり、体温を維持するために血圧は上がります。

しかし、なかなか寝付けない人と違うのは、夜になるとすぐ眠くなる人は、就寝時間になると昼間と同じ血圧でも、布団に入ると体温がすぐに下がる違いがあるのです。

どうして自動的にそのような事が起こるのでしょうか?

これは、体内で生み出される熱の量(熱産生)が少なく、眠る直前には代謝が下がるという”身体の習慣”が関係してます。

睡眠と体温の関係は、近代、かなり研究が進んでおり、これは深部体温と皮膚温の変化が大きく関係していると言われています。

睡眠のメカニズムは脳の休眠

赤ちゃんは成人に比べて体格も小さく、まだ活発な知性的な脳の活動は低いですよね。一方で、未発達の筋力で精一杯動こうとするので、この時、体にあるエネルギーの代謝で体温はかなり高くなります。

この時、手足の甲の皮膚血管が開き、体に対する手足の相対的な体温が上がっ行くので、今度は体の内側、「深部体温」が下がり始めます。つまり、露出している手足を動かすと、自然とそこに血液が集まりますが、同時に血液と一緒に体温も移動し、そこで放熱が起こるんですね。

こうして手足から体の芯の温度が放熱して行くと、今度は体の中心は冷えて消化や体力を下げながら、徐々に代謝が落ちていきます。

この「体の中心部の活動が下がった」と脳が察知すると、頭の方でも”休んだ方が良いだろう”と、脳自身の活動を止めようとするのです。

これが、睡眠のメカニズムです。

一方、成人の場合は赤ちゃんに比べて体力もあるし、また脳の活動も赤ちゃんよりも激しいので、当然、フルパワーで長時間活動できてしまいます。しかしこれは実際「いつまでも起きていられる体質」なのではなく、ただ単に、脳がオーバーヒートで活動しすぎて、体の方の深部体温を察知できなくなってるだけなのです。



2つの方法で夜はグッスリ

3不眠症

寝不足を解消するとは、”深い眠り”を体得することです。何時間寝たのかではなく、布団に入ったらすぐにグーグー寝られる体質になることです。これには、まず、いち早く脳に「深部体温を知らせる」必要があります。

・寝る直前に暖房や明かりを消す
今から寝ようと思う時に、パチリと明かりのスイッチを消すのではなく、室温自体を事前に通常過ごす温度よりも下げ、視界に入る物や気になる事をまず見えなくさせます。冬なら、暖房は寝る前に通常よりも、ちょっと寒いくらいに設定、明かりはホントに僅かなくらいで、”体を動かしにくい”という状況を作り出します。

・昼間の活動で疲れたら、運動以外で体温を上げる
お風呂に入るとポカポカしますが、実際の深部体温、つまり体の中心部は、運動後のようにそれほど大きく上がることはありません。このため、湯船に浸かって疲労が取れるのは、皮膚から感じる温度に比べて、体の中心部の体温が低いからリラックス出来るのです。

したがって、「温めのお湯」なら少し長め、「熱いお湯」なら短時間で湯船から上がると、深部体温に比べて皮膚表面の温度の方が高くなります。前述した赤ちゃんの眠りの仕組みがここで応用できるのです。



まとめ

今回は、体温と睡眠の関係から寝不足解消に役立つ方法をご紹介しました。ただ、今回は割愛しましたが、以上の方法でも寝付けない人というのは、ストレスや疲労の他に、”病気”や、”肥満”が関係しています。標準体型で、特に基礎疾患のない方なら、今回説明した方法を日々使うことで、徐々にすぐ寝られる様になるはずです。今回の解説のかなめとしては、体温をコントロールして”脳を上手に騙すこと”というイメージですね。